正しいのはだれ?
ある夫婦がケンカをしました。夫も妻も、自分が正しいと言ってゆずらず、決着がつきません。しかたがないので、ラビの家に相談に行きました。ラビというのはユダヤ教の先生のことです。
まず最初に、夫がラビの部屋に入りました。夫は1時間も妻への不満をまくしたてました。ラビは何も言わずに聞いていましたが、最後に夫に向かって、「あなたの言い分はもっともです。あなたが正しい」と言いました。
次に、夫と入れ替わりに妻がラビの部屋に入りました。妻も同じように、1時間も夫への不満を並べたてました。ラビはやはり黙って聞いていましたが、最後に妻に向かって、「あなたの言い分はもっともです。あなたが正しい」と言いました。
夫と妻はそれぞれ満足して、仲よく手をつないで自分たちの家に帰って行ったのでした。
さて、ラビの妻が、話のすべてを部屋の陰でこっそり聞いていました。夫婦が帰ったあとで、妻はラビに言いました。「どうして夫にも妻にも、『あなたの言い分はもっともです。あなたが正しい』などと言えるの? 2人は正反対のことを言っていたじゃないの」
ラビは妻に言いました。「きみの言い分はもっともだ。きみは正しい」