まず部屋をあたためよう
1930年代に、国際連盟は世界の軍縮に取り組みましたが、うまくいきませんでした。軍縮会議の議長を務めたスペインのサルバドール・デ・マダリアーガという人が、その当時をふり返って次のように書いています。
「われわれは、間違った方向から話を始めてしまったために失敗した。馬車を、馬の前に置いてしまったのだ。敵意と不信がうずまく世界で武器を捨てようと呼びかけても、冬の嵐の中でコートを脱ぐことを勧めるようなもので、うまくいくはずがない。だが、あたたかい部屋に入れば、人に言われなくても、だれでも自分からコートを脱ぐ」
同じように、和解することで暴力の根底にある対立がなくなれば、そして報復や復讐を生む過去の戦争の傷が癒やされ、憎しみが消えれば、武器を持とうとする気持ちも自然に消えていくのです。
「平和学の父」と呼ばれるヨハン・ガルトゥングはこう言っています。
「武装解除(武器を捨てること)によって平和が実現するのではない。平和になることによって武装解除が実現するのです」
和平交渉を武装解除の交渉から始めたら、銃や爆弾に頼る人々は平和の実現に抵抗するでしょう。解決していない対立があるところには、必ず暴力があるからです。火があるところに煙がくすぶるのと同じです。煙を無くしたいのなら、まず火を消さなくてはなりません。順番を逆にしたのでは、うまくいきません。