熱湯は冷ましてから飲もう
王様には一人の美しい娘がいました。たくさんの男が結婚を申し込んできましたが、王様はそのたびに、絶対不可能な試験を出しました。ぐつぐつ煮えたぎる熱湯の入った壺をわたし、一滴残らず飲むことができたら結婚を許すというのです。
娘に夢中になっている男たちの多くが挑戦しましたが、とても飲めたものではありません。口の中をひどく火傷して、逃げるように帰っていきました。
でも、ついにウサギのように頭がよい男がやってきました。ウサギは頭がよいのだろうかと思った人がいるかもしれませんが、この話はアフリカのウガンダという国の民話です。たぶんウガンダでは、ウサギは賢い動物と考えられているのでしょう。
それはともかく、また王女に結婚を申し込んだ男が現れたことを聞きつけて、村人がぞろぞろ広場に集まってきました。熱湯を飲む試験に合格できるかどうかを見に来たのです。
いつものように、王様は熱湯が入った壺を男にわたしました。さあ、男がどうするかと村人が見ていると、男は輪になって見ている村人一人ずつに、壺をのぞきこませ、「この熱湯をごらんなさい。いまからこれを飲んでみせますよ」と言いながら、全員に見せて回ったのでした。
最後の一人に見せ終わったときには、熱湯はすっかり冷めていて、男は火傷することも、熱い思いをすることもなく、〝熱湯〟を飲みほすことができたのでした。もちろん、めでたく王様の美しい娘と結婚することもできました。
対立が起こったとき、熱すぎて手がつけられないほどなら、熱が冷めるのを待つのが賢い方法です。
(ウガンダの民話より)