奴隷制廃止のために戦った人
1835年のことです。奴隷制度反対を主張する『リベレーター』(The Liberator:解放者)という新聞を発行していたロイド・ガリソンは、ボストン・コモン(マサチューセッツ州ボストンにある公園)で奴隷解放のための演説を行い、警察に逮捕されました。
それはギャリソンを助けるための逮捕でした。彼の主張を知って怒った暴徒が、彼をリンチにかけようとして迫っていたからです。彼は夜の闇の中、護衛付きの馬車で密かに街から脱出したのでした。
そんな危ない目にあいながらも、彼は奴隷制廃止をめざす戦いを続けました。30年後、ついにリンカーン大統領が奴隷解放宣言(1862年)を行い、アメリカの奴隷制度は廃止されたのでした。
クエーカー(キリスト教の宗派)の人びとは、奴隷制を廃止するための運動で主要な役割を果たしました。クエーカーたちは、アメリカの町々を巡って奴隷制の罪深さを説き、廃止を主張しました。なかなか耳を傾けてもらえませんでしたが、最低でもその町に一人、反奴隷制の主張に賛同してくれる人が出てくるまで、嫌がらせや迫害を受けても、そこに踏みとどまって主張を繰り返しました。そしてついに、彼らの忍耐が実を結ぶ日がやってきたのです。
今日、武器の開発や調達に何十億ドルものお金が費やされる一方、紛争解決や平和構築のためにはわずかなお金しか使われていません。そんな状況を見ると絶望しそうになります。しかし19世紀、奴隷制廃止のために戦った人びとは、もっと何もない状況の中で、あきらめずに戦ったのです。
彼らは多くの犠牲を払いました。奴隷商人と奴隷所有者は莫大な財産を得ました。しかし、正義は奴隷制反対の側にあったので、運動は最終的に勝利をつかむことができたのです。平和を実現させるための努力も、いつの日かきっと、戦争で儲ける人びとに打ち勝つことでしょう。