PEACE STORIES

お母さんに花を贈った少年

家路を急いでいた若いお母さんが、道を歩いていた人と、出会い頭にぶつかってしまいました。彼女は「ごめんなさい、ぼんやりしていました」と謝りました。相手の人も、「こちらこそ、ごめんなさい」と謝りました。2人は礼儀正しく言葉を交わして、それぞれの方向に歩いて行きました。

家に着いたお母さんが夕食の準備をしていたとき、幼い息子が、こっそり近づいてきて、お母さんの後ろに立ちました。それに気づかなかったお母さんは、振り向いた拍子に子どもとぶつかり、あやうく料理の皿を落としそうになりました。お母さんは、思わず大きな声で、「どうして黙ってこんなところに立ってるの!? 危ないじゃない」と叱りつけました。男の子は悲しそうに自分の部屋に戻って行きました。

そんなことがあった夜中、お母さんはのどが渇いたので、水を飲むために台所に行きました。すると、廊下のすみに、空き瓶に入った花があることに気づきました。いつからここにあったのでしょう? お母さんは、もしかしたら息子がプレゼントしようとしていたのだろうかと思いました。台所でぶつかったときは、母親を喜ばせたくて、こっそり後ろに立っていたのかもしれません。それなのに叱りつけたりして、かわいそうなことをしたと後悔しました。

そのとき、お母さんはハッとしました。通りで知らない人とぶつかったときの自分の態度と、息子にぶつかったときの自分の態度が、あまりにも違っていたことに気づいたからです。

夜が明けると、お母さんは朝いちばんに息子のベッドのそばに行き、「あの花はママへのプレゼントだったの?」とたずねました。

男の子はにっこりほほ笑んで、庭に咲いていた花がママみたいにきれいだったから、プレゼントしたくて摘んだのだと答えました。

お母さんはとても感動しました。
「きのうのことをゆるしてちょうだい。叱ったりして、悪いママだったわ」
「ぼく、なんとも思ってないよ。ママのこと大好きだよ」
「ママもあなたのことが大好きよ。きれいな花をありがとう。うれしいわ」

イラスト

たとえば、明日あなたが交通事故で死んでしまっても、会社はだれか代わりの人を見つけてくるでしょう。少しは困るでしょうが、代わりの人は必ずいます。でも、家族にとっては、あなたの代わりはいません。あなたがいなくなってしまったことを悲しみ、あなたのことをいつまでも忘れないでしょう。それなのに私たちは、家族のことをおろそかにしがちです。会社の同僚や道ですれちがった見知らぬ人ほどにも、家族のことを気づかわないことがあるのではないでしょうか。あなたは家族を大切にしていますか?

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